チラシ・紹介・検索広告を同じ土俵へ。塾経営のためのMMM導入ステップ

塾の集客は、数字の見え方がチャネルごとにバラバラです。
- チラシは「配布枚数→問い合わせ」の途中が見えにくい
- 紹介は「いつ・何が効いたか」を説明しにくい
- 検索広告は「CPA」は見えるが、翌月以降の継続に影響する
この状態で“最適化”をしようとすると、会議はだいたい「見える数字が強いチャネル」が勝ちます。結果として、短期の入塾は増えても、粗利が残らない・現場が回らないが起きがちです。
本記事では、個別・集団・オンラインを併営する塾を想定し、チラシ・紹介・検索広告(+SNS、ポータル、既存生徒向けの案内など)を 同じ土俵(粗利) にそろえて、8週間で運用定着させるMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)の導入ステップをまとめます。
MMMは「当てる分析」ではなく、「次週の配分を迷わず決める仕組み」です。塾では特に、入塾数よりも先に 粗利(講師稼働・教室稼働を含む実質の利益) を定義し、チャネルを横並びで比較できる状態を作ると、投資判断が安定します。
なぜ塾の広告は同じ土俵に乗らないのか
塾のマーケは「媒体レポートの数字」だけでは揃いません。理由は3つです。
1) タイムラグが違う
– チラシは配布から来校までに“間”があり、短期で判断しづらい
– 紹介は「信頼の蓄積」が効くため、因果の説明が難しい
– 検索広告はクリック~問い合わせが近く、短期の数字が強く見える
2) 成果の定義が混ざりやすい
– 問い合わせ(リード)を成果にすると、体験で止まるケースが評価に混ざる
– 入塾(契約)を成果にすると、季節要因(新学期・受験期)の影響が大きい
3) 費用の入れ方が違う
– 検索広告は費用が明確
– チラシは制作費・配布費・エリア分けが混ざる
– 紹介は現金ではなく「割引」「特典」「講師工数」などでコストが出る
このままでは、同じ“売上”でも、どこに利益が残っているかが見えません。
さらに塾は、一般的な商材よりも「受け皿」が意思決定を左右します。
- 個別は講師の空き枠が詰まると、問い合わせが増えても受けきれない
- 集団はクラス編成や座席数が制約になり、増やせる時期が限られる
- オンラインは地域制約が弱い一方で、時間帯の稼働が偏りやすい
この制約を無視して獲得を増やすと、短期の入塾は伸びても、体験対応の品質低下や既存フォロー不足から退会が増え、結果として粗利が崩れることがあります。
だから塾のMMMは、「広告の勝敗」ではなく、粗利と稼働の整合を中心に設計します。
MMMを塾経営に使うと何が変わる
MMMは、時系列データを使って「売上(または粗利)」を、複数の施策と外部要因で説明する枠組みです。
塾での目的は、難しい数式を理解することではありません。目的は次の2つに絞ると運用できます。
- 目的1:粗利を守る予算配分ルールを作る(チラシ/紹介/検索広告/その他を横並びにする)
- 目的2:季節要因やイベント要因を分離する(新学期、定期テスト、受験期、休会・退会の波)
MMMの導入で起きる“実務の変化”は、例えばこうです。
- 「CPAが良いから増やす」ではなく、粗利の増分が最大になる配分に寄る
- 短期で弱いチャネル(紹介、既存生徒向け案内など)を、過小評価しにくくなる
- “今月の答え合わせ”より、来週の配分を決める材料が揃う
塾でMMMが効きやすいケース
次の条件に当てはまるほど、MMMの導入効果が出やすいです。
- チラシ・検索広告・紹介など複数チャネルを並行して回している
- 繁忙期と閑散期の差が大きく、経験則だけでは外しやすい
- 個別と集団とオンラインを併営していて、受け皿制約が複雑
- 退会の波が読めず、獲得を増やしても粗利が残りにくい
週次で配分を動かすケース
イメージをつかむために、かなり単純化した例を置きます。
ある週のデータで次のような傾向が見えたとします。
- 検索広告の費用を増やすと問い合わせが増えるが、講師稼働が逼迫して体験枠が埋まり切る
- チラシは遅れて効くが、指名検索と来校が増え、繁忙期の入口として機能する
- 紹介は件数は少なくても、入塾率が高く、結果として粗利が残りやすい
このときMMMの結果をもとに、会議では次のように決めやすくなります。
- 来週は検索広告を増やすが、体験枠が埋まるところで上限をかける
- 同時に、紹介の特典を変えずに周知を強め、入塾率が高い流入を取りにいく
- チラシは配布日とエリアを固定し、遅れて効く前提で波形を観察する
最初に決める 粗利の定義と意思決定ルール
MMMの前に、塾ではここが最重要です。粗利の定義がブレると、モデルの結論が毎回変わります。
塾の「粗利」を実務で回る形に落とす
塾のコスト構造は、商材の“原価”より 稼働 が支配します。そこで、まずは会議で説明できる粒度で「粗利(貢献利益)」を固定します。
例(おすすめの最小定義):
粗利(週次) = 売上 −(講師稼働に紐づく人件費)−(教材/システム等の変動費)−(広告費)−(紹介特典/割引負担)
ポイント:
– 家賃など固定費は、最初から無理に割らない(判断が遅くなる)
– ただし、稼働制約(講師・教室・オンライン枠)は必ず見る
チャネル別に見落としやすいコスト
粗利がブレる原因は、広告費そのものより「広告以外の変動費」が見えていないことが多いです。
変えない枠/変える枠を先に分ける
- 変えない枠(固定)
週次の予算増減の上限、稼働が逼迫しているときの抑制ルール、季節イベント期の例外ルール - 変える枠(調整)
チラシ/検索広告/SNS/ポータル等の配分、体験誘導 vs 資料請求誘導の比率、既存生徒向けの案内強度
データの揃え方 チラシ・紹介・検索広告をつなぐ
MMMは“データが多いほど勝ち”ではありません。塾はまず、意思決定ができる最小セットで十分です。
「土俵」を揃えるための変換テーブル
最終的に見たいのは、チャネル別の粗利の増分です。
この表を会議に置くと、会話が「好き嫌い」ではなく「役割」になります。
8週間で運用定着する導入ステップ
「分析できた」だけでは塾は変わりません。会議体に入って初めて価値が出ます。
- Week 1-2 粗利の定義と、変えない枠/変える枠を固定する
- Week 3-4 週次データの収集フローを作り、欠損の扱いを決める
- Week 5-6 初回のMMM推定→仮の配分ルールを作り、小さく動かす
- Week 7-8 例外(繁忙期・満席・退会波)をルール化し、運用として定着させる
週次会議の型 これ以上増やさない
会議で揉めるときは、だいたい「誰が何を決めるか」が曖昧です。週次会議の最後に、次の3点だけを必ず残します。
- 来週の配分の数字
- その理由を一行で
- 例外ルールを発動したかどうか
まとめ:明日からのチェックリスト
最後に、明日から着手できる順番でチェックリストを置きます。
- 粗利(貢献利益)の定義を1枚にし、週次でブレない形に固定した
- 変えない枠(予算の上限/稼働ルール/繁忙期例外)を先に決めた
- チラシ・紹介・検索広告の“投入量”を週次で同じ粒度にそろえた
- 施策ログ(配布・特典・キャンペーン・LP変更)を残す運用を作った
- 週次会議の型(状況→差分→意思決定)を固定し、意思決定だけを残した
最後に、判断がブレない合言葉を一つだけ置きます。
「配分の議論は、獲得の勝ち負けではなく、
粗利と稼働の整合を取り続けること」
Author
nakasi0210